夫婦共にとくに異常がない場合には、妊娠を希望されてから、半年で90%、2年で100%のカップルが妊娠することができます。
月経不順の方や、基礎体温が2相性でない方などは、赤ちゃんを望んで妊娠できない期間が1年経たない場合でもご相談ください。
不妊症の原因は女性側(女性因子)50%、男性側(男性因子)50%と言われております。

妊娠成立は大きく分けると次のようになります。
1.排卵
2.捕捉(排卵した卵子を卵管采に取り込む)
3.受精(卵管内での受精)
4.卵管内での受精卵の発育
5.着床

初診後の治療の進め方についてご説明します。

生殖補助医療の治療・検査項目の費用一覧

①エビデンスについては、日本生殖医学会が発行の「生殖医療ガイドライン」より抜粋

②当院倫理委員会:厚生労働省研究倫理審査委員会報告システム委員会番号23000120

項目(エビデンス評価) 費用 備考
採卵術料 健康保険適応で実施
体外受精 健康保険適応で実施
顕微授精 健康保険適応で実施
卵子活性化処理(B) 健康保険適応で実施 カルシウム法を行っております
胚培養(A)~(B) 健康保険適応で実施
胚凍結保存 健康保険適応で実施
胚移植術 健康保険適応で実施
Assisted hatching(B) 健康保険適応で実施
ヒアルロン酸含有
培養液前処理
健康保険適応で実施
タイムラプス培養(B) 20,000円 先進医療:タイムラプス撮像法による受精卵・胚培養
として認可されました。
二段階胚移植 健康保険適応の凍結胚移植の全額自己負担に相当 先進医療:二段階胚移植術として認可されました。
当院過去96例中64例(66.7%)妊娠成立しています。
G-CSF子宮内投与 申請準備中。
当院倫理委員会の審議の結果、承認される。
当院の治療実績:子宮内膜厚が7㎜未満の症例で実施。
54周期中、妊娠率35.7%、継続妊娠率25%。
子宮内膜胚受容能検査(C) 右記条件に当てはまる方、無料実施
(当院治療中の方)
40歳未満で良好胚4回胚移植をしても妊娠しない場合は
着床障害も疑われるため、適応条件とします。
信頼性低い。当院で着床障害の症例は無く、
妊娠成立しております。
子宮内細菌叢検査(C) 当院では実施せず
Th1/TH2測定(C) 当院では実施せず
SEET法(C) 当院では実施せず
子宮内膜スクラッチ(C) 当院では実施せず
タイミング法

自然排卵周期でタイミングを合わせながら、検査を行っていきます。

[検査内容]
①ホルモン検査
②頸管粘液検査
③ヒューナーテスト
④子宮卵管造影検査
⑤胞状卵胞数のチェック(重要)
⑥排卵日近くの卵胞径測定
⑦排卵後の卵胞チェック(必須)
⑧精液検査など

子宮卵管造影画像
排卵誘発治療・人工授精(自然排卵周期で妊娠が成立しない場合)

次のステップとして

 

①クロミッドなどの内服薬を主体とした排卵刺激とタイミング法

②注射薬による排卵刺激とタイミング法

③人工授精で治療をします。

 

この順番で妊娠率が上昇します。

人工授精

最初から妊娠率が最も高い人工授精を行わずタイミング法とするのは、人工授精に伴う多胎妊娠のリスクを抑えるためです。
各方法は、3周期から6周期で次のステップへと移行していきます。
とくに、内服法のクロミッドは、副作用の面からも3回で中止したほうが良いと考えています。
論文でも、5回以上使用すると妊娠率が落ちることが報告されています。(Fertility and Sterility 2004:81:545-550)。

人工授精はどんなことをするの?

人工授精とは精子を人工的に子宮のなかに注入する方法です。
卵管の通過性が特に障害されないような症例に適応されます。
その適応はタイミング法を行ってもなかなか妊娠しない場合や、性交障害、乏精子症、精子無力症、ヒューナー検査陰性症などがあります。
人工授精にはある一定以上の精子数が必要とされているため、重度の精子不良例に対応する適応には限界があります。

人工授精の流れ

.月経開始から2~5日目:排卵誘発の開始
超音波で卵胞の状態を確認した後、排卵誘発を開始します。
(排卵誘発は、飲み薬+注射を2~3回追加する方法と、注射を毎日行う方法があります。)

.排卵が近くなるまで超音波で卵胞の大きさなどをチェックしながら排卵誘発を行っていきます。


3.排卵が近くなったら:人工授精を行う日時の決定
排卵日に合わせて人工授精を行う日時を決めます。
排卵させるための注射を行い、人工授精当日についての説明があります。
(当日使用する採精容器もこの時にお渡しします。)

 .人工授精当日
① 事前にお渡しした容器に、自宅で精液を採取していただき、クリニックへお持ちください。
(お持ちいただくのはご主人でも奥様でも構いません。)
※ご自宅での精液の採取が難しい方は、クリニックの採精室をご利用いただけます。
② 精子の洗浄・濃縮を行います。所要時間は約45分です。
<精子の洗浄について>
人工授精では、洗浄によって精液が清潔になり、精子の動きを妨げる白血球や未熟な精子、死んでいる精子、奇形精子を取り除くことにより高い妊娠率が見込めます

精子の洗浄

③ 内診台へ上がっていただき、処理された精子を細いチューブを使って子宮の中へ注入します。
④ 10分ほどお休みいただき終了となります。
⑤ 後日、排卵の確認のため来院していただきます。排卵が確認されたら、着床率高を高めるため の注射と黄体ホルモンの補充を行います。

アドバイス
人工授精では、日本の統計上、6回以降の妊娠率の上昇は認められないと報告されていますので、ここで次のステップアップを考えるタイミングがあります。

ポイント
人工授精には、人工授精針の代わりに胚移植用のカテーテルを用いており、注射薬による過排卵刺激と合わせて行うことにより、高い妊娠率を得ております。
(一般的に人工授精の妊娠率は10~15%位ですが、当クリニックの妊娠率は25%前後です)

人工授精の最も重大な副作用は、品胎(3胎、三つ子)以上の確率が高くなることです。現在、日本の三つ子以上の妊娠の大部分が人工授精によるものと考えらています。

高度生殖補助医療(体外受精・顕微授精)

体外受精-胚移植(IVF-ET)、顕微授精-胚移植(ICSI)は高度生殖治療といわれ、男性不妊、卵管障害、また原因不明で、人工授精を3回から5回行っても妊娠しない方が対象となります。

高度生殖医療技術センターについて

当クリニックの高度生殖医療技術センターは「培養室入口にエアシャワーを設ける・培養室内はエアフィルターを通した清浄空気を循環させる」など、室内のクリーン度が十分に管理された環境の中で作業を行っております。胚の成長には培養室のクリーン度が重要です。

高度生殖医療技術センター紹介動画

体外受精-胚移植(IVF-ET)

体外受精とは、その名のとおり体外で、卵子に精子を受精させることをいい、またその受精卵(胚ともいいます)を子宮内に戻すことを胚移植といいます。
ですから、一般に体外受精と呼んでいることを正式には、体外受精-胚移植(IVF-ET)といいます。
よく人工授精と混同しがちですが、人工授精(AIH)は、単に精液を子宮内に注入することであり、その操作内容はまったく異なり、体外受精の方がより高度で、複雑な操作が必要となります。大きく分けて採卵、培養(受精)、胚移植の3つのプロセスから成り立ちます。

① 採卵
細い針を卵胞と呼ばれる卵の入った袋へ刺し、卵胞液を吸い出してきます。採れたばかりの卵は成熟していないものもあるので、2.5~3時間ほど培養液のなかで培養します。その後、体外受精を行います。
採卵は、15~30分程度で終了します。終了後は、しばらくベットでお休みいただいきお帰りいただきます。

② 受精
運動良好な精子を卵子を入れたシャーレのなかに加えます。
十数時間で受精が起こります。

顕微授精-胚移植(ICSI)

外来の精液検査の結果、極端に精子数の少ない患者さまに対しては顕微授精が行われます。
顕微授精は調整精液から活動性の高い1つの精子を選び、細いガラス針を用いて直接、卵に注入する方法です。
採卵、移植等は体外受精に準じます。
顕微授精-胚移植(ICSI)
③ 培養
培養液のなかで、受精卵(胚)を2~5日育てます。
当院では現在「胚盤胞培養」を基本に行っています。これは卵が受精しているかどうかを確認した後、受精から5日目まで卵を外に出さずに育てる方法です。

タイムラプス培養器(Geri)

Geri2

当院ではタイムラプス撮影で記録できる培養器で受精卵(胚)を培養しています。
この培養器では途中観察のために外に胚を取り出す必要がなく、かつ各個人ごとの環境設定(ガス供給濃度)ができるので最善の環境で培養することができます。

胚のコンピュータ診断 (Eeva)

Eeva2

胚の分割までにかかった時間を機械が判定して結果を5段階評価します。
良い胚から順に移植することにより妊娠率の向上が期待できます。

受精卵の成長の様子
(画像をクリックすると大きく表示されます)

④ 胚移植
発育した胚を細いチューブを使い、子宮内へと戻します。
採卵した周期に移植する方法と、一度凍結してから別の周期に移植する方法があります。
移植前に、胚の透明帯に穴をあけたり、薄くする操作を行います。
(これをアシストハッチング・・・AHAといいます)
移植後は20分ほどベッドで安静にしていただき、お帰りいただきます。

<受精卵の凍結保存について>
1~2個胚移植をしても受精卵が残る場合には、これを凍結して保存することも可能です
(-196℃の超低温の液体窒素に凍結保存します)。また、胚移植後妊娠しなかった場合、別の周期に凍結卵を解凍し、移植することができます。

AMH検査(卵巣年齢検査)について

ヒトの卵子は、胎児の時に妊娠6ヶ月で約700万個のピークに達した後減少し、出生時には約100万個、排卵を開始する年齢には30万個まで減少しています。
100万や30万と言う数字を聞くと非常に多いように感じますが、出生時認められる卵胞(卵の入った袋のこと)の半分は閉鎖の過程にあり、発育を開始する前に卵胞閉鎖になり排卵することなく消滅します。
30歳以降では、卵胞閉鎖が主体となります。卵子の99.9%は、排卵に至らぬまま消滅することになります。思ったより卵子の消費は早いと思われますが、では何歳まで妊娠はしやすいのか、妊娠は可能なのか?
具体的には妊娠ターニングポイントは35歳と考えてください。35歳で卵子の数は25,000個となり、そこから加速的に減少します。また、卵子の染色体異常(構造的にではなく数的異常、流産率が上昇し始めるのです)の割合が上昇してきます。生理があるから妊娠が可能であるということではないのです。自分の残り卵子や妊娠しやすい卵巣なのか、どうしたらわかるのか?
そこで残り卵子の数で表される卵巣年齢や卵巣の機能を、抗ミューラー管ホルモン(AMH)を測定することで現在の卵巣の状態を調べることができます。
検査自体は、少量の血液を採取するだけで特別な処置は必要ありません。
費用は、生殖補助医療の治療に保険医適用があり、金額は1,800円になります。

男性不妊検査

男性側の検査は、主に精液検査になります。
女性と違い月経周期に合わせることなくいつでもできます。
精子の数や精液の量は変動が激しいので結果が悪い場合には、何度が受けていただく場合がございます。

1.精液検査

胚培養士が顕微鏡を見ながら精子の数をカウントしていきます。

男性不妊検査

精子数、運動精子数、精液量をカウントして精液との割合を計算します。
必要があれば下記の2~4の検査を行います。

2.クルーガーテスト

精子の形態学的検査です。
特殊な染料で精子に色をつけ奇形の有無を調べます。

3.サバイバルテスト

精子の受精能力を調べる検査です。
射精した精液を洗浄して、なるべく運動している精子を回収し、これをスイムアップという処置をして100%動いている精子を集めます。
この2段階の処置をした精子を培養器に入れて24~36時間培養します。
通常、受精能力のある精子は、24時間培養しても80%以上は生存して運動しています。40%以下の生存率では受精能は乏しく、20%以下では受精しないと考えられます。

4.精子受精能検査(ハムスターテスト

精子の受精能力についての検査。
この検査の結果によって、顕微授精時にカルシウム処理を考えます。